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2013-08-14 11:09 | カテゴリ:映画
8/18(日)21:00-23:15 テレビ朝日 
日曜洋画劇場で高倉健主演『あなたへ』が放送されます。
それに関連して、今SMAPファンには嬉しいコラム
楽天エンタメナビ「Map of Smap」の連載で、
「映画『あなたへ』が知らせる草彅剛をめぐる二、三の事柄」
が発表され、剛君の『あなたへ』での演技について
詳しく論じて下さっています。(リンクから行けます!)
筆者の相田冬二さんはキネマ旬報を始めとして、
いろいろな雑誌に俳優草彅剛論を書いている方で、
いつも全面的に剛君の魅力を好意的に賞賛して下さっているので、
ファンとしては嬉しい限りです。

今回のコラムで、特に私がなるほど、とあらためて共感したのは、
以下の記述です。

「彼が高倉健にお金を渡そうとするくだりのニュアンスに顕著だが、
 ふたりの関係性は決して近づいていない。こうした正確さこそが「描写」には必要であり、草彅剛の演技は、映像が要求している演出をこえて、人間という生きものが抱える孤独を体現している。」

「決して距離をつかめない。これが草彅剛がこの映画で選択した方法である。近づいたり、遠ざかったりしない、距離。変わることのない一定の距離。それは相手への信頼であり、彼自身の矜持でもあるだろう。」    
 ※矜持(自分の能力を信じて持つ誇り。自負。プライド。)


この記述を読んで剛君の2つの映画がぱっと心に浮かびました。
1つめは「BALLAD 名もなき恋のうた」の又兵衛と廉姫の距離感。
この映画はもともと姫と家臣というはっきりとした身分の差があるので、距離感を演じるのは当然なのですが、
剛君の自然な演技から醸し出されていた2人の距離感があればこそ、
最後の命がけの突撃前夜、
「自由に自由にお生き下さいませ。」
 と万感の思いをこめて告げる又兵衛に
「自由に生きようおまえと。」と
廉姫が又兵衛の胸に飛び込んだ瞬間縮まった2人の距離が
強い感動とともに観る者の胸を揺さぶったのだと思います。
あの瞬間に生まれた、
目を見開いた驚きと感動に満ちた又兵衛の表情が劇的で、
剛君のメリハリの利いた演技に心打たれてしまいました。

距離感と言えばやはり『ホテルビーナス』が一番強烈でしょうか。
さまざまな問題を抱えて、社会の裏側でひっそりとただ時を過ごしているようなホテルビーナスの住民たち。
語らず、干渉せず、明確に距離を保ちながら暮らす
訳ありの同居人たち。
そこに1人の少女(サイ)が加わったことで、
保たれていた距離感が少しずつ崩れ始め、
無関心でいられなくなくなって行く大人たち。
特にチョナンはサイを放ってはおけず、次第に距離を縮めて行く。
子どもにはそんな力があるということを気づかせてくれる
素晴らしい映画。チョナンとサイの距離が少し縮まって、
2人で無言で洗濯物を干す時の空気感がたまらなく好きです。
自分自身も傷ついているチョナンの
人間らしさが再生する兆しを感じる素敵な場面。

最後サイの父親のガイが警察に連行される時が、
ちょうどサイが心を遠ざけていた父親を受け入れようとした
瞬間だったのも、クライマックスで劇的でした。
それに気づいたチョナンが親子の時間を作ろうと
警察に飛びかかって行く姿に、
あの保たれていた距離感は消えていました。

「クズって何だよ!」「この野郎!」「クズってなんだよ!」
「誰もクズじゃない!クズなんて一人もいない。生きてる。
 みんなちゃんと生きてるよ。何があっても、何を抱えても、
 抱え、抱えきれなくても、でも、でも皆ちゃんと生きてるよ。」
「待てよ」「待ってて」「待ってくれ」「待てったら」
「待てよ」「待ってくれ」
「どけクズ!」
というチョナン渾身の言葉の連続の後、
チョナンは刑事に階段の下に突き落とされます。
無口なチョナンが堰を切ったようにしゃべり、
人に近づいた感動的な瞬間でした。

相田さんが評されているように、剛君は本当に距離感、
孤独感を表現できる素晴らしい俳優だとあらためて思います。
そして、『あなたへ』はその距離感を逆に縮めない演技で、
人間の孤独、矜持、信頼を演出を超えた説得力で演じたという解説に、感銘を受けました。

確かに高倉健さんが最後に新たな旅に出るラストシーン。
大きな問題を抱えながらも笑顔で働く田宮(剛君)を、
遠くから見つめた後、おもむろに歩き始めます。
最後まで縮まらない距離。
映画『あなたへ』は、
人はそれでも人に何かを伝えることができるのだということを
教えてくれる凄い映画だったのだと、
相田さんのコラムを読んであらためて思いました。

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