fc2ブログ
2021-07-23 00:01 | カテゴリ:未分類
第23回『青天を衝け』の
「篤太夫と最後の将軍」の余韻が凄くて、
何度も繰り返し見ています。

メインテーマ音楽とともに出演者が紹介
されますが、「徳川慶喜 草彅剛」は
江戸時代から明治時代に変わる瞬間
扉が開いてバババーンと出てきますね。
あれはこの番組の制作陣が
日本の時代の扉を開いたのは
徳川慶喜公だという強い思いがあって、
この作品を作っていることが
象徴されていますね。
それは今回の大河が渋沢栄一の書き残した
『徳川慶喜公伝』に込められた思いを
もとにしているということがあるでしょう。

脚本が本当によく練られていて、
幕末の大政奉還前後の状況がわかりやすく、
徳川慶喜公にとても感情移入してしまいます。

水戸藩出身ながら将軍にならざるを得なかった
複雑な背景を抱えた英邁すぎる慶喜公。
無残にも身内によって大事なものを次々と奪われ、
討幕派の巧妙な策略によって追い詰められていく
孤独な悲劇の将軍を思って胸が苦しくなりました。

原市之進の死を知った時の慶喜公の悲嘆。
1人囲碁に向かい薩長との駆け引きに
頭を巡らす慶喜公の孤独。
ひとりぼっちで苦悩する将軍のそばで
そっと寄り添う渋沢成一郎。
成一郎がこの時そばで慶喜公の苦悩を
見ていたからこそ、後に栄一にも
慶喜公が苦悩していた様子で
伝わったこともあるはずですね。

それにしてもこの辺りの剛君の演技が
深くて沁みるのです。
決してやりすぎない抑えた演技なのですが
悲しみに震える気持ち、
1人で追い詰められていく気持ちが、
じんわりかつしっかりと伝わってきます。

そして大政奉還。
声を張りすぎず、でも丁寧に
心を込めて時空を越えて。

淡々と話が進んでいくようで、
後半は一段ギアを入れ直し、
思いを込めて願いを込めて

「それゆえ政権を朝廷にお返しし、
 広く天下公平な議論を尽くして
 天子様の決断を仰ぎ
 同心協力してこの国を守りたい。
 さすれば日本は、さすれば日本は
 海外万国と並び立つことができよう」

この私心なき国を思う高邁な精神。
御神君である家康公でさえ
反論できなかったという異色の演出で
ドラマティックに描き、
説得力と深い感慨を生み出しました。

二条城の広間に1人脱力する慶喜公。
幕臣たちの誰にも理解されず深まる孤独。
松平春嶽と和解できたのが唯一の救い。

小御所会議で土佐藩主の山内容堂が
「慶喜公は祖先から受け継いだ
 将軍職をも投げ打って、
 大政を奉還された。
 慶喜公が優れた人物いうことは
 もう天下に知られておる。
 会議をするならここに呼ばんで
 どうするがじゃ」と唸ってくれて
ぐっときてしまいました(涙)。

でも、岩倉具視、西郷吉之助、
大久保一蔵たちが束になって、
慶喜公排斥を推し進めていきます。
薩摩の挑発に乗り、
殺気立つ幕臣たちも
もはや慶喜の言うことを聞きません。
なんてことでしょう。
なんて悲しい運命だったのでしょう。

第23回の慶喜公の覚悟と孤独と悲哀。
剛君の気高く複雑で深みがある演技。
これまでももちろん素晴らしかったのですが
作品ごとに演技の幅と深さと技術を
更新していく剛君の姿に今更ながら驚き
感嘆させられています。
剛君の演技は押し付けがましさがなく
内面から滲み出てくるもので
その場の空気を作っている感じがします。

いつもなら「僕は何も考えていない」と
うそぶきますが、
9月号の月テレ「お気楽大好き」で珍しく
ポロッと本当のことを教えてくれました。
「演じる時はさまざまな場面で
 想像を膨らましていろいろ考えている」と。
そうでしょ。そうでしょ。
そりゃあそうでしょ。
そうやって人知れず努力するあなただから
作品ごとに演技力が
更新しているのだと思います。

そして「鋼のような心を持って」とか
「優しい人間になりたい」とか
思っている人だから、
人間的に惹きつけられる魅力があって
いつまでも見ていたい人なんだろうなあ。

『青天を衝け』の草彅慶喜とても素敵です。
表現の幅が広がって貫禄も出てきて、
とても見応えがあります。脚本の視点
内容も新鮮で示唆に富み見応えがあります。

それなのに『青天を衝け』の放送が
全41話で、年内で終了すると発表され、
大きなショックを受けました。
オリンピックによる休止が発表された時も
要望のメールを送ったので、
放送時間を延長してほしいともう一度
メールを送りたいと思います。

ただそう言う気持ちがあると同時に、
草彅剛は「ペペロンチーノ」のような
たった1時間しかないドラマでも、
忘れられない演技を見せてくれる人だ
と思ったりもします。
そして、今回の脚本家
大森美香さんに対する信頼も
半端なくあります。

要望は出しつつ、信じるところは信じつつ
最後まで精一杯応援を続けていきたいです。


管理者のみに表示する

トラックバックURL
→https://keikostudio.info/tb.php/1037-753c036f