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2020-09-30 15:23 | カテゴリ:映画
とうとう『ミッドナイトスワン 』観ました。
いろいろな要素が詰まっていてとても見応えがありましたし、
まさに草彅剛の新境地を観ることができて感慨深かったです。
多くの方がこの映画に感動されて、たくさんの感想を出されていて、
言い尽くされている感じもしますので、
私は私的にとても惹かれたところを順番に書き出していこうと思います。

全体を通して説明なしで状況を伝える演出が巧みだと思いました。

広島の母親との電話で、
女性らしい部屋の中、可愛い部屋着で男言葉で話すアンバランス。

登場とともに一瞬にしてその立ち振る舞いに惹きつけられる凪沙。
赤いハイヒールのカッ、カッという靴音、
前のめりで足早に歩く姿に、
その人の心情や世間に対して武装しているような生活ぶりが伝わり、
その音に鳥肌が立ちました。
初対面で一果に向かって話す時の早口。
ぶっきらぼうな雰囲気と眼差し。
最低限なことを手短に指示する几帳面さ。
うーん、なんかカッコいいなこのお姉さん。
草彅剛はどこにもなく、一瞬のうちに観客を物語に引き込む力が凄い。

ホルモン注射の副作用で体調が悪くなり、
部屋に駆け込み薬を飲むシーンの「吐きそう」の言い方が・・・。
あの動きとセリフのテンポがリアルでたまらなかったです。
一果がそんな凪沙の苦悩をジイッと見つめている瞳がまたいいんです。
化粧と涙でぐちゃぐちゃになった顔で、窓からのネオンを背景に
タバコを燻らせながら色鮮やかな金魚の水槽を眺めている凪沙。
孤独と哀愁に満ち満ちていて、うーん、美しい絵画を見ているよう。

私はこの映画の素晴らしさは、
やはりこの主人公の凪沙が魅力的だということが肝だと思います。
男性女性に関わらず、
感情移入できるのはその人物がリアルで魅力があるから。
私はこの凪沙がトランスジェンダーとして生きづらさを抱えていても、
節操を保ち
(部屋の掃除にこだわったり、レシピを持っていることも含めて)、
自分らしく生きるために努力し、
他人に依存しすぎることをよしとせず、しかしながら
他人への思いやりをきちんと持っている人であることに感動しました。
こんな人が側にいたら、是非ともお友達になりたい。
綺麗なものに憧れる女性らしさにも共感するし、
一緒に語り合いたいくらい。

皆さん、凪沙と一果の二人のシーンが好きな方が多いですね。
うちの夫にどのシーンが一番好き?と聞いたら
最後の海の場面と言っていました。
私はどこか一つを挙げろと言われたら、
なんと広島での凪沙と早織の対決シーン。
あの時の凪沙の姿は、決して見た目は美しくないかもしれないけれど、
決死の覚悟で一果を幸せにしたいという思いに溢れていました。
早織の前で抱き合う凪沙と一果。
愛し合う二人を見せつけられ激昂する早織。
この時の苦々しい気持ちを水川あさみさんが表現していて素晴らしかったな。

私は自分の母親が育児放棄をするアルコール依存症だったので、
(突然のカミングアウト💦)一果の状況がよくわかりました。
でも私の母親は私に暴力は振るわなかったので、
一果くらいの年齢から自分で家事をし、
お酒を隠したり、親の面倒を見たりしながら生活していました。
結局母はお酒で体を壊し、48歳で亡くなってしまったので、
いくら立ち直って欲しいと願っても、
ああゆう親が簡単には立ち直らないことを知っています。
私の場合自暴自棄になりそうな私を救ってくれたのは高校の担任の先生でした。

だから、凪沙が親戚の前に出て恥かしめを受けても、
一果を守りたいと思ったあの決死の行動に心から感動しました。
普通なら立ち直ることが難しいであろう早織を、
真実の母の愛を見せ付けることで変化させた。
この映画はリアルを描きつつ、
ある意味御伽話のような夢を描いている映画でもありますね。
いや、凪沙の愛が岩をも動かすほどのエネルギーがあったからこその奇跡。
私はあのシーンが本当に苦しんでいる子どもに
希望を与える場面だと思っています。

でも、決死の覚悟で臨んでも
「母になりたかった」凪沙の願いはあの場面では打ちのめされました。
一果を取り戻せなかった。自分の母の嘆きを目の当たりにした。
私はこの精神的ショックが、
手術の予後を悪化させたと思ったのです。
人間は失恋したり、愛するものと引き離されたら免役力が落ちますから。

でも一果の心には凪沙の真実の愛がきちんと届いていました。
実花先生の献身的な指導のおかげでバレエを続けることができました。
早織も母親らしくなろうと努力しました。
そして中学を卒業した後、良い報告を持って訪ねてきてくれました。
凪沙は絶望から幸福感へと一気に導かれました。結末はともあれ・・・。
世の中を変えるのは月並みですがやはり愛しかないのだと涙が流れました。

124分しか時間がなかったのがとても残念に思われるくらい、
全ての登場人物に興味を惹かれました。
キャストのみなさんが魅力的で、
それぞれのサイドストーリーを知りたいと思うくらいだったことも
この映画に厚みを与えていると思いました。

そして渋谷慶一郎さんの音楽と服部樹咲さんのバレエのなんと美しいこと。
一果が海に向かっていく時のメインテーマのピアノの音が体に染み込みました。
最後の白鳥の湖を堂々と踊る一果のバレエと音楽は希望そのもの。
あの美しさは劇場の大画面でこそ味わうべき芸術の醍醐味だと思います。

私は土日に3回見ましたが、土曜日のレイトショーを夫と見た時、
この映画はミッドナイトに見るとやっぱり感動が倍増するなと感じました。
真夜中のお姫様たち。はかない夢や願い。とにかく愛おしく美しい。
レイトショーからの帰りの車の中、
やはり他の県でレイトショーを見た娘が電話をくれました。
「良かったよ。凄い良かった。」あとは言葉にならないようでした。

昨日火曜日、
東京で働く息子も貴重な休みを使って映画を観てくれたそうです。
夜、わざわざ電話がかかってきて、熱く感動を語ってくれました。
まずは主演の2人の演技がもの凄い良かったと絶賛。
剛君は凪沙にしか見えなかったし、
服部さんは初々しい演技があの役にハマっていてこの上なく良かったと。
そして観客を引き込むストーリーを作った監督を称えていました。
凪沙の結末については息子の職業柄、貧困と医療の実態について
なかなかリアルな現実を描いているとも言っていました。
美しいだけではない問題提起がされている作品だと思ったそうです。
映画を観て、息子とこんなに語り合ったのは本当に久しぶりです。

感動と、気づきと、考える機会を与えてくれた『ミッドナイトスワン 』
たくさんの人に見ていただきたい作品ですね。


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