2017-03-17 16:22 | カテゴリ:ドラマ
最終回で二科興三はどういう態度を見せるのだろうと思っていましたが、
「楓が死ぬ」という現実を突きつけられるまで、自分の罪を認めず、
自らの保身のために殺された人たちや
その家族の無念と絶望に歩み寄ること無く、
「それがどうした。」と開き直り、他人の心の痛みに思いをはせること無く、
最後まで自分のプライドを捨てなかった姿は情けなかったです。

そして、この場に及んでも相手や殺された父親まで侮辱するとは傲慢そのもの。
浩一の「俺は〜、お前みたいな大嘘つきが大っ嫌いなんだよ」と
渾身の怒りを込めて放った言葉に全く同感であり、
この思いに応えなければ、「人間として救われないなあ。」と思います。

このような、人の怒りや哀しみや涙を目前にしても、
絶対に「懺悔」などしないで開き直る一部の老人たちがこの日本社会にいますね。
自分たちが叩き上げで苦労して現代の日本社会を作り上げたのだという
自負心だけが正義で、その陰で日の目を見ること無く、
不名誉な死に方をした人間たちを悼み、敬意を払うという気持ちがない人が。
そういうプライドばかり高く傲慢な人々が作り上げた日本って一体どうなのでしょう。

今の日本はどうですか?正義や愛が社会できちんと機能しているでしょうか。
政財界、法曹界、医療界、教育界、芸能界、マスコミ業界などなど、
もちろん常識的な人間性と使命感を持って仕事をされている方が大半ですが、
弱肉強食はあたりまえ、自分の欲と利益とプライドを最優先して、
他人の命の尊厳を平気で踏みにじって罪の意識を感じない輩もあふれています。
詐欺行為はもちろん罪ではありますが、
善人の仮面を被った詐欺師以上の悪人は
どうやったら懲らしめることができるでしょう。

「目には目を。嘘には嘘を。」「地獄に堕ちろ〜。」

ドラマというエンターテイメントの世界だからこそ、
この日本社会の実態を見せて、
視聴者に知る機会を、考える機会を与えることができますし、
それがエンターテイメントの使命でもあると思います。
そういう意味で、そんな大きな使命を果たしたドラマ
『嘘の戦争』の脚本を書かれた後藤法子さんの功績は偉大ですし、
この作品の制作の携わった全ての人たちは素晴らしい仕事をされました。
ものを作る人たちが「志」を持って仕事をしているという熱量に圧倒されました。

詐欺師を主人公とすることで、現在の日本社会がどれほどの嘘にまみれているかを
実感させられました。そして嘘には良い嘘と悪い嘘があるということも。
百田やカズキ、ハルカやオウムが良いチームを作って詐欺の世界を魅せてくれました。
カズキが浩一を通して大人になっていく感じがよく描かれていましたし、
ハルカの愛情深い詐欺師っぷりが、可愛くてとても魅力的だったと思います。

人間の内なる「愛」や「良心」や「正義感」が人に涙を流させるのだということも。
こんなにたくさんのキャストの涙が流れた連続ドラマって他には思い出せません。

まず、主人公を演じる草彅剛があらゆる種類の涙をたくさん流しました。
そして共演者の方々も。でも人間には「愛」があるから涙が流れるのですよね。

「もう二度と二科家の前には姿を現さない。」と浩一に言われた時の楓の
涙が美しく、今時のドラマには希少価値になった純情なヒロインが素敵でした。
昔からヤクザな男と純真なヒロインは結ばれないのです。
「ごめんな。」といいながら楓の頭をなでる浩一の切ない風情が頭から離れません。

そして隆が、最終的にはあの二科興三も号泣しました。
二科隆は最後の最後まで、父興三と一の瀬浩一の復讐の板挟みになり苦しみましたね。
隆が涙を流す場面では、TVを観ていた娘が
「隆さんいい人で頑張っているのに可哀想すぎる!!!」と悲鳴をあげていました。

浩一を刺したことになっている晃を面会に来た楓と隆の場面。
楓が浩一からもらったリングを出して、晃と微笑み合い、隆も一緒に苦笑い。
晃が自らの罪を償わなければと思った気持ちは救われます。
やはり、罪を償おうという気持ちがなければ光に向かって進むことはできない。

最後の空港の隆と陽一のシーンはラストにふさわしい見応えがありました。

隆「そうやってつき続けるのか、嫌いな嘘を、ずっと。」(略)
陽一「同じだよ。嘘の無い人間なんていない。
   けど、嘘もつき続ければ、
   ひとつくらい本物になるかもなあ。
   一の瀬浩一は死んだ。
   復讐に囚われた男は消えて
   別の人間になれるかも。
   だから俺はつきつづける。
   うそがうそでなくなるその日まで。」
隆「で、そのパスポート、なんて名前なんだ。」
陽一「ないしょだよ。」
隆が初めて陽一に見せた笑顔。陽一も隆に笑顔を見せながら搭乗口へと向かう。

この時の草彅剛の堂々とした語り口に、
30年間この世の地獄を生き抜いて来た男の奥深さがあって見事でした。
何の因果か人間の裏の裏まで知り尽くし、天才詐欺師になってしまった男。
タイに戻った男、元通り詐欺師を続けているようでした。
でも白いシャツ。「ようこそ、オーナー。」と微笑む詐欺師。
復讐に囚われている男ではなく、
傲慢でいかれた日本人を懲らしめるダークヒーローになったのか?

最終回の回想シーンに登場した陽一の父千葉豊氏は清潔感にあふれていました。
父親は大学生に乱暴されそうになって殺されたOLの事件を公にしようとした人。
あのお父さんの息子だもの白いシャツのあの詐欺師は
もう昔の浩一ではないと思います。
最終回の次の日は3月15日で千葉陽一君の誕生日だったのですものね。

それにしても、草彅剛の演技は進化を続けています。
脚本・キャスト・スタッフの情熱を引き出した原動力となったのはやはり剛君の魅力。
人を惚れさせる力がなければ、あんなに情熱的な作品は成立しなかったでしょう。
草彅剛の中にある、覚悟・男気・愛・懐の深さは尋常でないのではありませんか?
つかこうへい氏に「お前は喜怒哀楽の表現がへただ。」と言われたという剛君が、
あんなに自然に豊かに繊細に感情を表現する役者になったのですね。
「役の感情を自分のものにする」ことをつか氏から教わったと言う剛君の演技が
長い年月を経て、多くの監督によってますます磨かれ、
今、多くの人に感動を与えていることが、とにかく嬉しいです。

カンテレの『嘘の戦争』のスタッフの皆さまには心からの感謝を申し上げます。
ファンは草彅剛の演技を、活躍をこれからもずっと見続けたいと願っています。
今回のドラマで草彅剛のかけがえのなさに気づいた視聴者もたくさんおられようです。
ファンは後押しを惜しみませんので、今後とも剛君をよろしくお願いいたします


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